観測技術 ミッション機器

新しい窓
「XRISM」とは?

XMA:

透過力の高いX線を集めるX線望遠鏡

X線を効率よく観測する為には、普通の望遠鏡と同じように大きな口径からX線を一点に集める必要があります。しかし、X線は波長が短く、透過力が高いため、普通のガラスのレンズや凹面鏡で集めることができません。どうやって集めればいいのでしょうか?

実は、X線望遠鏡は全反射と呼ばれる現象を利用してX線を一点に集めます。これは、屈折率の大きい物質から小さい物質に光が入ろうとしたときに起きる現象で、入ってきた光がある一定の角度より浅い場合に起きます。たとえば、水中から水面を見上げると真上の方では水面を通して空を見ることができますが、離れたところの水面は鏡のように水中を映し出してしまいます。これは、光がより屈折率の低い空気中に出ることができずに再び水中に戻ってきているのです。

水と空気の場合と同じように、X線も非常に滑らかに磨かれた金属にごく浅い角度で入ってくると、全反射を起こしてわずかに進行方向を変えます。これを利用してX線を一点に集めるのです。実際には、表面を金でコーティングした円筒形の鏡をバームクーヘンのように同心円上に並べてX線を集めるしくみになっています。表面は凹凸の高さが数百万分の1mm以下という非常に高い精度で磨かれています。

Resolve:

超精密にエネルギーを測るマイクロカロリメータ

マイクロカロリメータは、X線が素子に当った時にごくわずかに温度が上がることを利用して、エネルギーの大きさを測る装置です。日米が共同で開発し次世代のX線天文学を担う新しい観測装置として非常に期待されています。マイクロカロリメータを使うと、入ってきたエネルギーの量を非常に細かく測る事ができます。これにより、観測対象のX線天体の温度や組成などを非常に精密に計測することができるようになります。また、運動する物体が出す光の波長がずれて見える「ドップラー効果」を利用して、対象の天体の動きを知ることができるという、これまでのX線の観測では難しかったデータを得ることができるようになります。

マイクロカロリメータの原理はとてもシンプルです。物質がX線を吸収すると、X線が持っていたエネルギーが熱に変わります。これは光が当るとものが温かくなるのと同じ現象。この温度変化を計測することでエネルギーの量を測るのです。とはいえ、星からやってくるX線はごくわずかで、その温度上昇はあまりに小さいため、検知するためには装置を絶対零度近くまで冷やさなければなりません。もちろん、温度計も極めて感度の高いものが必要になります。

XRISM

Xtend:

広い波長域で画像を撮るX線CCDカメラ

可視光の望遠鏡と同じように、天体からやってくるX線を捉えて画像を撮影することができます。軟X線撮像検出器で使われているCCDは、X線に対する感度を上げる工夫が施されていることを除けば、原理はごく普通のデジカメとあまり変わりません。半導体に入ったX線が電子に変換され、電気信号に変わることで画像を得ます。

ただ、可視光線の場合は光子が1つ当ると電子が一つだけ飛び出すのに対して、X線の場合はエネルギーが大きいために一つの光子で沢山の電子が飛び出します。可視光線の場合は当った光子の数=電子の数になり、光の強さを測ることができますが、X線の場合は当った光子が持っていたエネルギーの量(周波数)=電子の数になり、エネルギーの量を画像と同時に測ることができるのです。これは、可視光線では3色のフィルターをつけないとカラーの映像が得られないのに対して、X線ではフィルターなどを使わなくても画像と同時に色の情報を得られることを意味しています。